狼少女と王子様



俺は畑さんの気持ちに気がついてしまった


俺はこの時から茜を好きになる資格を失った


茜を傷つけた畑さんを可哀相だと

悲しい人だと


分かってしまったんだ


「海様は狡いな・・・。
誰にでも優しいなんて。」

そこにはさっきの畑さんの姿は無く

大粒の涙を流していた


拭うこともなくただ頬につたって落ちるだけ



俺は何も出来ず泣き止むのをずっと待っていた


数分して畑さんが涙を拭い

真剣な目で俺を見つめた


「私、本当は赤ちゃんが ・・・。」


ブーッブーッ


畑さんが何か言いかけた所で

タイミング悪く畑さんの携帯が鳴った


畑さんは苦笑して携帯を手に持ち

校舎の方へ歩きだした



電話に出る少し前に振り返り笑う


「私、本当は赤ちゃん
“大好き”なんだ。」


俺はこの笑顔を見た瞬間

畑さんの出した条件を受け入れようと思った


茜と朱里さんの為に


こうして俺はモデルと

凛の婚約者のふりをするようになった