『彩っ!!』 車に乗り込もうとしていた彩は私の呼び掛けに気付き振り返った。 ―…私たちは歩みよる。 『……倖知』 『待ってるから。彩が帰ってくるの、待ってるからね』 もっと気の効いた事が言えればいいのに… 結局、こんな事しか言えなかった……。 けど、彩はニコって笑って『うん』と頷いてくれたんだ。 プップゥーーッ!!! おじさんを乗せた車は大きなクラクションを鳴らして走り去っていった。 響き渡ったクラクションは 空に吸い込まれるように余韻だけを残して消えた。