自宅の出窓のカーテンを少し開けて、智哉の車を見ると

ちょうど発進した所だった。






『…さ ぃ…、ごめんなさ い…』




遠く小さくなってゆく智哉に、


“ありがとう”が言えなかった……。




何度も繰り返すのは“ごめんなさい”の言葉だけ……。





私は


卑怯だ………。




言えなかった“ありがとう”はこれが初めてじゃない。


言いたかった“ありがとう”はこれが初めてじゃない。




いつも、伝えれない現実を作り上げているのは私自身なのだ…と、気付いた。





私は……

ごめんなさいが伝えたいんじゃない…。

私は…

私は…────





──…智哉??

それでも私は

あなたに…



『ごめんなさい』