「ただいまー……」

家に帰ると、誰もいなかった。
親は仕事で、羽夢はまだ学校。

自分の部屋に一直線して、そのままベッドに倒れこんだ。

綾三月先輩。
綾三月先輩。

好きなのに、両思いだったのに嬉しくない。

なぜ?

「教えて、羽夢」

気づいたら、弟の名前を呼んでいた。

なんでそこで羽夢の名前が出てきたのかも分からない。

「何もわかんないよ」

自分が何考えているかわからない。
自分のことは自分が一番知っているはずなのに。

「わかんないよ、羽夢」

もう一度弟の名前をつぶやいて、そのまま眠りに落ちた。