カウンター席にネオンと並んで座った。

そしてメニューを眺める。

「そちらさん暑くないのかい?フードなんかずっぽり被っちゃって」

年老いたマスターがネオンを見ながらそう言った。

特に暑いわけでもねぇこの気温に真っ黒なローブにフードまでかぶってたらそりゃ怪しいわな。

「悪いね極度の恥ずかしがりやなんだわ。

注文いいかい?」

マスターは「あいよ」と頷いた。

「じゃあ、このディーラをショットで一つ。あとは、焼き飯でも何でも良いんだが子どもが食えるもん作ってくれないか?」

「はいよ、ちょっと待ってね」

そう言ってマスターは左足を少し引きずりながら移動して、まずオレの頼んだ酒を用意してくれた。

「ほいディーラね。塩かなんかいるかい?」

「リモンあるかい?」

「ほいよ」

マスターは黄色い柑橘系の果物のカットを添えてくれた。

オレはそれを手に取り、直接口にキュッと搾って、ディーラを流し込む。

喉から食道、異が燃える様にカッとする感覚。

たまに掃き溜めに酒が落ちてることもあったがほとんどは期限切れで劣化したもの。

ルーザがご機嫌な時に出してくれる酒以外では初めてだった。

「こいつぁ美味い」

そういうとマスターはまるで自分が誉められでもしたかのように誇らしげに笑った。

いつのまにか店内には芳ばしい臭いが漂っていた。

「さっ、こっちもできたよ。お嬢ちゃん召し上がれ」

そう言ってネオンの前に出されたのは穀物を野菜と共に炒めた料理だった。

調味料を焦がした芳ばしい香りがなんとも言えない食欲をそそる。

「飯食うときは?」

ネオンは誰にも聞こえない声で「いただきます」と言った。

まぁ、世間を何もしらないこいつにしてみたら上出来だろう。

油断するとすぐに手づかみで食べようとするのでオレは無理やりスプーンを持たせた。
まだ不器用でポロポロと溢しているが始めに比べたら少しは上達してるんだろうな。

ほんとあれだけのことが起こっても未だにこいつが不敗と恐れられる兵器とは思えない。

何よりルーザは騎士団やスティグマに狙われると言っていたが今のところ何の驚異もなく来ているじゃあないか。