俺達はリンクタウンを離れて5日歩いた山あいの街に流れ着いていた。

目指すのはそこからまた十程の山を越えた先にある水門の街ヴェネディートである。

そこにはルーザのメモに書かれた二人目の人物がいるはずだからだ。

「小さな街だな。

ま、とりあえず腹ごしらえくらいはできそうかな?」

黒いローブに身を包むネオンは空腹と疲労からか時おり立ち止まっていた。

なによりあの森の中で出会った奴等のことを思い出すのだろう、オレのズボンの端を掴んで離さなくなっていた。

「おい、いくぞ」

そう言って歩き出す。

街の中は石畳が張り巡っていて、それ以外は特に特徴の無い緑が生えている。

家も一件一件がこじんまりとしており、山あいの休息を取るための街にすら思えてしまう。

「看板すらありゃしねぇが、飯食える所はあんのかね?」

辺りを見渡しても食事どころの看板すらなかった。

それどころか民家にも表札のひとつ無い。

転々と民家の隣に小さな畑が見えたが、果たして実るような作物があるのだろうか?

街の中を歩いていると、とある建物から人の話し声が聞こえてきた。

「この陽気な雰囲気、それに外でも分かるアルコール臭……つまり、ここは!」

急に意気揚々と走り出すオレ。

そのズボンの端を掴んでいたネオンも自ずと走り始める。

二枚の扉が内開きに弾け飛ぶと、その建物中では昼間っからだと言うのに数人の男が酒をあおっていた。

「おやおや一見さんだねぇ、ようこそ山あいのbar『野鼠の酒場』へ」

白い鼻髭をたくわえ、小さな眼鏡をかけた優しそうなじいさんがそうオレ達を向かえた。

そこにいた四人の客と思われる内の三人がニヤニヤと笑いながらオレ達を見ていたことに、オレは気づいていた。