封衣の代金はもともとルーザによって支払われていたらしい。
昔からそうだが、ルーザには不可解なほどに先見の明があったように思う。
まるでルーザによって筋書きが決められているかのように錯覚したことも少なくはない。
「なぁ、あんたルーザについて何か知っているか?」
オレの問いにリンは下を向いて何かを考え、ゆっくりと口を開く。
「分からない。
ただ、私が言えるのは彼女はこの世界の誰よりも平和を望んでいるということ」
「……そうか、ありがとな」
何故「悪かったな」ではなく、「ありがとな」と言ったのか分からない。
ただ、その一言でリンは笑ってくれた。
それだけで、オレはそんな疑問を忘れることができた。
「アジェットお茶ありがとう。
リン、お洋服ありがとう」
ネオンがアジェットとリンに駆け寄りそう言う。
アジェットは目を逸らして頷き、リンはネオンの手を取る。
「これから先、あなたに辛いこと嫌なことが沢山起こるかもしれない。
でも、忘れないで、あなたを思っている人がいるっていうことを」
「私を思っている人……?」
リンは笑って頷いた。
ネオンは首をかしげたが、リンに微笑み返していた。



