この日オレ達はルーザの家に帰っていった。

家につくとネオンはなんだか落ち着かない様子で部屋の隅々を目だけで探っていたが、ルーザが温かいスープを作るとそれを一気に飲み込んだ。

身体も温まり安心したのだろうか、そのまま深く眠るネオンを、オレはルーザの寝室のベッドへと運んでやった。

部屋に戻るとルーザは葉巻をふかしていた。

その横でルーザに髪を撫でられながらシルビーも眠っていた。

母親の様な優しいルーザの姿を初めて目の当たりにして、からかってやろうかとも思ったが、オレは口を開くことはなかった。

睡眠中に人間の脳が記憶の整理をするかの様に、声すら出さないことでオレは今日の出来事を少しでも早く整理しておきたかったのかもしれない。









いつの間にか眠ってしまっていたオレ。

ルーザは静かに毛布をかぶせると家から出ていった。


静かな夜にルーザはヒュージ落下の跡地に立っていた。

冷たい風が毛皮のショールを揺らす。

「……願わくばこのまま。いったい幾度こんな叶わぬことをあたしは星々に願ったんだろうね。

しかし、それはやはり叶わぬ願いだった。運命は再び回り始める。

26年停滞した運命の歯車は加速していつの間にか世界を飲み込んでいくだろう。これがあんたの望んだ世界なのかい?」

空を見上げたルーザ。

小さな星が僅かな雲の切れ間から覗いていた。

風が吹き抜け枯れた木が揺れた。














そして一方王都では、ある人物がスラムに向けて旅立つ準備を整えていた。

「……いよいよ私は手に入れる。

全てを繋ぐピースを、待っていなさい"黒涙"そして……ルーザ」