「あ、あ?……タバコ切れちまったな」


胸ポケットのタバコケースは振っても何も聞こえない。

オレはそれをグシャリと握り潰して投げ捨てた。


ポイ捨てだなんて口煩いことを言うのは止めてくれ。

見たら分かるように、この辺りにはタバコだけじゃない。ガラクタから生ゴミから金属の破片から、ありとあらゆるゴミが散乱している。





「しかし暗ぇな、この街は」

オレはまだ見たことはないが、遠く異国の地では「白夜」と呼ばれる現象があるらしい。


真夜中になろうと太陽が沈まず街は光に照らされる。


オレの住む地には朝というものが滅多にやってこない。

言うなれば白夜とやらの反対の現象と捕えることができそうだ。


この現象に名を付けた者はいないが、あえてオレが付けるとするなら「白き夜」の反対……


そうだな「黒き朝」、「黒朝」がピッタリだろう。