双子月

朋香と美穂が入って5分程経つと、受付の人が光弘と林先生に中に入るよう促した。

2人共、しばし黙って鏡の世界を手探りで進んでいた。


すると行き止まりに辿り着いてしまったので、光弘が、

「引き返して他のルートを探しましょう。」

と林先生に言った。



林先生は腕を組んで鏡の壁に寄りかかり、

「その必要はないよ。
別に時間制限がある訳でもないし。
誰にも邪魔されない、ちょうど良い空間だね。
少し話をしようか。」

と、さっきまでとは少し違う、鋭いオーラを出しながら言った。


光弘も話がしたかったので好都合だったが、少し怖気付いてしまっていた。


「君は、朋香ちゃんと上手く付き合っているつもりかい?」


その質問に光弘はちょっとムッとして、


「何をもって上手くというのか分かりませんが、俺は朋香の支えになってあげたいと想っているし、少しは支えになっていると自負しています。」

と答えた。


「そうだね、朋香ちゃんの話を聞いたり、さっき間近で見せてもらったけど、その限りでは頼りにされてるように見えるね。」



何故だか、いちいち勘に触る言い方に聞こえる。

第三者の、しかも精神科医の林先生から見れば、自分達の付き合い方に何か問題があるとでも言うのだろうか?


「朋香ちゃんは何でも君に相談するかい?」


…この質問だけはされたくなかった。

光弘が1番気にしている事だからだ。


「…俺はそうであって欲しいと想っているけど、朋香が話す気がないなら無理には聞かない…
聞いて良いのかどうか分からない…」


悔しいけど認めざるを得なかった。