部長の挨拶が終わって、皆、講堂を出た。

と同時に、真朝が、朋香・美穂・瑠璃子に駆け寄って来るなり、頭を勢い良く下げた。


「皆、本当にありがとね!
最高の出来やったと思うよ、マジで!!」


真朝が興奮気味に言う。


「何か、脇役のつもりだったのに、かなり出番が多かったような…」


とジュリエット役の美穂が言った。


「あはは、脚本いじってるうちに、どんどん楽しくなってきてさぁ。
けど美穂も、練習より迫力あって良かったよぉ!」


「私なんか…銀タイツ…」


耳まで真っ赤にして瑠璃子が言う。


「あ、あはは…ウケ落ちじゃないとなぁと思ってぇ。
でもほら、ちゃんと約束通り、華道部の団子屋のPRを入れたでしょ(汗)」


「だって、『演劇に出て華道部の売り子さんをあまり手伝えないからPRを』っていうのが部長の条件だったんだもん~!」


「ちゃんと売り上げにも貢献するから~。
じゃ、さっそく団子屋から回ろうか?」


と真朝が言ったその時だった。



「朋香ちゃん?」


背後から男性の声がした。

朋香が振り返ってみると、私服を着た男性がこちらに向かって手を振っている。

朋香は一瞬誰だか分からなくて困ったが、その微笑みですぐに思い出した。


「林先生!」


朋香が気付いてくれたので、林先生は更にニッコリ微笑んだ。

朋香は林先生に駆け寄って行った。


「本当に来てくれたんですね、ありがとうございます!」


「ううん、朋香ちゃんの可愛い若紫が見れてとても良かったよ。」


林先生は素直に感想を言ったのだが、朋香はからかわれたと思って少し頬を膨らませた。

そして、ハッと気付いて、林先生の周りをキョロキョロと見回した。


「あぁ、雫ちゃんかい?」


その様子に気付いて林先生が言う。


「あ、はい…」


「ごめんね、誘ってはみたんだけど、やっぱり調子が良くなかったみたい。
でも、代わりにしっかり見てくるように頼まれたよ。」


林先生はちょっと申し訳なさそうに言った。


「そっか、仕方ないですね…。
そうだ先生、私の友達、紹介しますね!」


朋香は残念といえば残念だったけど、林先生が本当に来てくれただけでも充分に嬉しかった。