「よく参られた、イングランド区の使者殿」

「は、この度は突然の謁見を快諾頂きまして大変ありがたく存じます…
本来ならば、このような政治的な場は区のトップ同士にて行う事…
しかし我が区のトップ、イングランド王はただいま病床に臥せっており、差し出がましながら、次期王位継承権を持つ私、ロミオがお役目勤めに参りました」

「ロミオ殿、若くしてその堂々たるいでたち、さぞイングランド王も誇りに思っている事であろう…
面を上げよ
お連れの者もそう硬くなるでない」


「お心遣い感謝致します」


「おや、お連れの者は女性か」

「はい、私の幼少の頃よりの付き人でございます…
女といえど、そこらの者よりは十分腕が立つと私の傍に仕えさせております」

「ほぉ、イングランドではそのような事が…
我が区では成人した女性は、たおやかにしとやかに、その生涯を過ごすものじゃが」


「恐れながら、平安区の帝様におかれましては健やかに日々をお過ごしとの事、我が区までも聞き及ぶ程でございます
その御姿を私のような一介の従者が拝見出来るなど真に光栄なことです…
しかしこれは言い換えれば、私のような女性でも国政に関わり、何らかの形で区に貢献出来る場面があるという事…
帝様、是非、我が区と和平的提携をお結び下さいませ…
決して損にはなりませぬ事を、このジュリエットが命を賭してお約束致します!
古き時代は終わりを告げるのです…
区同士の関係も男女の考え方も、全てが新しい時代へと向かっているのです」


「ロミオ殿、えらく活きの良い雌馬を手なづけておられる」

「ジュリエット」

「は、立場もわきまえず意見申し上げた事、覚悟致しております…
いかようにも罰をお与え下さい…
しかし全ては平安区とイングランド区を想っての事、どうか先程申し上げた事をご審議下さいませ」


「ははは
良い、良いぞ、気に入った!
なるほど、女性というものはまた違った角度からの意見を持っておるようじゃ…
我が区で貴女に太刀打ち出来る女性はいないだろう、良い部下に恵まれておるな、ロミオ殿」

「私の部下への賞賛は私への賞賛と同じ事…
お褒めの言葉ありがたく頂戴致します」


「ふむ、良い良い
これ以上、話す必要はなさそうじゃ
我が平安区とイングランド区のつまらぬ争いなぞ、我々が生まれるそのまた昔に始まった事…
今更お互い何を憎むべき事があろう?
古い時代は終わったのじゃ
国交を開き、互いに高め合っていくのが今の時代なのだろう!
これをもって和平成立、国交復活と致そう」


「この歴史的瞬間を迎える事が出来、大変光栄に思います…
我が父も、この吉報にさぞ喜ぶことでしょう」

「うむ、さっそく祝いの宴の準備をしよう!
ロミオ殿もジュリエット嬢も、控えの間を用意させる、しばし休んでおられよ」

「ありがとうございます」