「そんなに退屈でつまらぬか?
かぐや姫よ」

「いえ、帝様
今までに見た事のない物ばかりで、圧倒されているのでございます」

「そういう事はもう少し心を込めて言うことをお勧めする
何なら、もっと珍しい物でも、もっと美味しい物でも、いくらでも用意させるぞ」

「いえ、ワタクシは充分満足しております…
ただ、ここ数日の城住まいで、老いたる両親の事が気になってしまうのです」

「竹取の老夫婦に関しては案ずる事はない
余の部下達に出来る限りの好意を示させている…
そちは安心して此処にいるが良い」

「ワタクシをいつまで此処に?」

「かぐや姫、そちが余を真に見てくれる為なら、余は何でもする覚悟でおる!
地位も名誉も財産も、惜しみなく使おうぞ」

「それらを捨てられると?」

「何故捨てねばならぬ?
これらは活用する為にあるのじゃ」

「そうですね、ワタクシも同じ立場なら、使える物は使うでしょう…
手段を選ばず…ね」

「かぐや姫…?」

「ワタクシの願いはただ一つでございます」

「その願いとは何じゃ?
余が…」



「お楽しみのところ、大変申し訳ございません…
帝様に取り急ぎお伝えすべき事が…」

「何じゃ、余とかぐや姫との時間以外に大事な物などあるというのか?
つまらぬ用なら、それなりの覚悟は出来ておるのじゃろうな?」

「は…滅相もございません…
しかし、帝としての御役目もどうぞお忘れなく…
事は区間問題に発展いたします、どうぞ話を…」

「区間問題?
どうした、どこかの区が戦争でも仕掛けてきたか?」


「それが全く逆なのでございます…
長年睨み合いを続けておりましたイングランド区より、和平を申し込む使者が帝様に御目通りをと、この平安区にいらしたのです」


「何、イングランド区が和平を…?」

「その通りでございます
これは歴史的にも経済的にも重要な展開…
どうぞ御正装なさって、使者と御会い下さいませ!
既に謁見の間にてお待ち頂いております」

「…確かに重要な問題じゃな…
分かった、すぐに用意をせい!
かぐや姫、申し訳ない、しばしお待ち頂けるか」


「帝としての御立派な御姿を拝見出来る事、とても光栄に存じます」

「くれぐれも顔は出さぬように…」

「承知致しました」