「…以上が帝様の御言葉にございます…
かぐや姫様におかれましては、速やかに御登城の準備をお願い致します」

「嫌です」

「…は?
今何と?」

「嫌ですと申し上げました…
ワタクシは御城へは参内致しません」

「何という事を!
美喜麻呂様、直々のお呼びですぞ?
特別待遇をなさると仰っております…
さぁ、急いで御支度を」

「嫌なものは嫌なのです
ワタクシは殿方に顔を見せるつもりはございません…
例えそれが帝様とて同じ事」

「何たる無礼な…
おい、竹取の老夫婦よ、はよぅ説得せい」


「姫や、帝様の御好意を無下にするなど、罰が下りますぞ」

「そうですよ、何も御結婚の御話ではないじゃないですか…
帝様の御城に呼ばれるなど、これほど光栄な事はないのですよ」

「いくら父上や母上が仰っても、ワタクシは譲れません」

「姫や、この年寄りを困らせないでおくれ」


「全くですぞ、かぐや姫様…
血の繋がりはないとはいえ、育ての老夫婦を困らせるおつもりか?
帝様の御力を持ってすれば、この老夫婦の平安区内でのランクの上げ下げなど簡単な事…
確か今、竹取の老夫婦は平安区内を自由に歩き回れるCランク…
かぐや姫様、御両親がDランクに落とされる事を御希望か?」

「それが一区を治める帝様のなさる事なのですか?」

「かぐや姫様、御口がすぎますぞ」


「姫や、余命幾ばくの私達のランクが今更下がろうと気にする事ではない…
私達も姫の意志を尊重してあげたいのは山々じゃ…
しかし、これから先、生きていく上で、何を優先すべきか学ぶ事も大事なのじゃよ…
分かるかね?」

「父上…」


「その通り、帝様に反して生きていくなど不可能な事…
いい加減、御両親の手を煩わせるのを御止めになりなさい!
貴女にとっても、この老夫婦にとっても、悪い話ではないのです」



「…分かりました、母上、仕度を手伝って下さい」

「まぁ、とっておきの十二単を出しましょうね」

「姫や、帝様は尊き御方、そして慈悲深き御方、何も案ずる事はないのじゃよ」


「そうでございますとも…
安心して参内なされませ」