それはこの国に古くから伝わる物語。


一介の老夫婦が竹の中から得た、一人の光り輝く娘。

”かぐや姫”と名付けられたその娘は、瞬く間に年頃の娘へと成長し、その噂は身分を問わず都中に知れ渡り、求婚する者が後を絶たなかった。

しかし、全く興味を示さないかぐや姫。


結局、最後まで熱愛の意が冷めず、五人の公達が残った。

かぐや姫は、この世に存在するとも知れぬ幻の宝を持ち帰るよう、駆け引きをする。

そのような物はもちろん手に入らず、ついに五人でさえも諦めてしまった。


しかし、ついに帝の御耳にまでかぐや姫の噂が届いてしまう。

ありがたくも、もったいなくも、説得する老夫婦。

けれども、かぐや姫は頑として入内はしなかった。


やがて、葉月も中旬に差し掛かる頃。

かぐや姫は月を見ては嘆き悲しむばかり。

その事情を明かすには、


「自分は月上で罪を犯し、下界へと舞い堕とされた。
しかし、十五の夜に月から迎えの者がやってくる。」
と。

老夫婦をはじめ、帝は持てる力の全てを尽くし、かぐや姫の月への帰上を阻止しようとするが、天上人の前に成す術はなかったのだ。



一体、彼女は月で何の罪を犯したのであろう。

月には魑魅魍魎、妖の魅力を持つ天上人がいるのであろう。



月とて下界とて同じ。

罪を犯した者は罰を受けて償わねばならない。



ただ、月を懐かしく想うか、憎らしく想うか

それは人それぞれ


今宵も月は黙って想いを受け入れるだけ