双子月

（何か…全身がズキズキする…
いたっ、頭に触るなよ、頭が１番痛いんだよ…
痛い、痛いって…
この…）



「頭が１番痛いって言ってるだろーが！」



光弘は思いっきり叫んだ。

土曜の朝。

（あれ、この天井、自分のアパートじゃない…？）



「光弘…！」

光弘の両親が椅子から飛び上がった。


「え、父さん、母さん…？」



光弘は一瞬、訳が分からなかった。

身体が固定されている。

目を凝らしてよく見ると、枕元で包帯を持った看護師がビックリした顔をしている。



「あ、ごめんね、包帯を替えようとしてたんだけど、痛かった？」

と、慌てて謝ってきた。



それから我に返ったように、

「目を、目を覚ましましたね！
私、先生を呼んできます！」


と部屋を出て行った。



「光弘、大丈夫？
貴方、事故に遭って頭を強打して、右足を骨折したの。
分かる？
覚えてる？」

と母親が光弘の手を取り、涙ぐんだ声で尋ねてきた。


（そういえば…そうだったかもしれない…）


ズキズキする頭で光弘は考えた。


「今日、何曜日？」


「土曜だよ。
お前が事故に遭ったのは昨日の夕方だ。
こんなに早く目を覚ましてくれるなんて…
やっぱりお父さん達の思っていた通りだ…」

と父親も眼鏡を外して涙を拭っていた。



昨日の夕方…事故…


「ともか…朋香は？
朋香と瑠璃子は！？」


光弘は起き上がろうとしたが、右足のギブスは天井から吊るされているし、右腕には点滴が打たれている。

それより何より、全身に痣でもあるかのように痛い。



「こらこら、まだ起き上がっちゃ駄目だよ。」


そう言いながら白衣を着た男性が入ってきた。

両親が椅子から立ち上がって、軽くお辞儀をした。


「これで全員、目を覚ましたね。」


その医者らしき男性が言ったのを聞いて、光弘は、


「全員って…朋香や瑠璃子もどこか怪我を？
意識を失っていたんですか？」


と、震える声で尋ねた。