金曜の夜。

林総合病院は慌しかった。


連絡を受けてまず1番に駆け付けたのは、朋香の両親だった。

続いて瑠璃子の両親。

そして、美穂・真朝・大輔。

隣県にいる光弘の両親は、急いで車で向かっているところだ。



光弘は手術中。

救急車で運ばれている間、意識が戻る事はなかった。



そして、駆け付けた救急隊員によって、もう1台救急車が手配された。

朋香は意識を失って倒れ込み、瑠璃子は興奮状態だったからだ。


朋香も瑠璃子も、鎮静剤を打たれて、今はベッドで眠っている。

誰も詳しい事を説明出来ない。



本人達は今、自分の意思とは別のところで戦っているのだから。

見守る皆は、ただただ光弘の無事を祈るしか出来なかった。



「有田さん、中川さん…!」


息を切らしてやってきたのは林先生だった。


「林先生…!」


呼ばれて、朋香の母親と瑠璃子の母親が振り返った。


「すみません、今日は僕は休みの日だったので、連絡が来るのが遅くなって…」


自分の担当患者が2人も事故に巻き込まれたと聞いて、林先生は慌てて病院へ駆け付けたのだ。


「そんなこちらこそ…
お休みの時にわざわざすみません…
先生、一体何があったんでしょうか…
誰も分からなくて…」

と朋香の母親が言った。



そこにちょうど光弘の両親が到着した。

手術室の前にたくさんの人が集まっていて、手術中のランプが付いている。

それを見て光弘の両親は、これは現実なのだとようやく思い知らされた。



「どなたか…どなたか、光弘の容態を…」

泣きながら光弘の母親が答えを求めた。