『通、大学受かったよ!』


『朋香、本当?
すごいや、お祝いしようよ!』


『じゃあ、いつものとこでコース食べようよ!
もちろん通の奢りでね♪』


『ちぇー…
でも良いよ、2人でお祝いしよう』


『じゃあ、夕方6時に公園の噴水前で待ち合わせね』


『了解!
受かったからって、浮かれて遅刻してくるなよー?』


『ソレはこっちの台詞だよ、遅刻魔のくせにー』


『大丈夫、今日はお祝いの花束を持って、絶対に朋香より先に着くから』


『うん、楽しみにしてるね』



そう、あの日、確かに通と約束した。

でも6時を過ぎても来なかった。


公園前の道路に人だかりが出来て、ざわついている。

どうしたのかなと思い、覗きに行った。



血の沼。

道端に落ちている赤い薔薇の花束が、これ以上ないくらい紅く染まっている。

子犬を抱えた子供が膝に擦り傷を作って、ワンワン泣いている。



『子供は無事だが、庇ったこっちは…』



ひょいと覗き込むと、安らかな顔をした通が真っ紅になって横たわっていた。



『もう、ほらね、やっぱり通が遅刻したでしょ…
通、ほら、大学の合格通知書!
まだママ達にも見せてないのよ?
通に1番に見せようと想ってたんだから!
ほら、早く起きなさい、お店予約してるんでしょ?
ねぇ、通、生きてるんでしょ?
ねぇ、通、死んじゃイヤだよ?』