「じゃあ、何で…。
今、通君はどうしてるんだよ?
俺、1回も見た事も聞いた事もない。」


光弘は疑問に思った。


「通は…
私が大学に受かったのと同時に…
海外留学に…行っちゃった…
その時のコトはよく覚えてないの。
誰も連絡先を教えてくれないし、通からも連絡がない。
流れ流され、気付いたら、林クリニックの付属病院に検査入院していたの。
そういう…いきさつ…」


朋香はアルバムをパタンと閉じた。


「本当に…それだけか?」


と光弘が聞いてきた。


「…?
どうしてそんなコト言うの?
私が嘘付いてるって疑ってるの?」


朋香もさすがに口調が荒々しくなった。


「…林先生が…
学祭のあの日、鏡の迷路の中で言ったんだ。
本当の朋香を知っているのかって。
何故病気になったのか、何故腕を斬るのか、何故時々記憶が曖昧になるのか。
家族の事、大学に入るまでの生活の事、全部自分は知っているけど、俺は知っているのかって。
そんなんで朋香を支えていけるのか、これからやっていけるのかって言われたんだよ!」


光弘が叫んだ。


「林先生がそんなコト…?」


朋香は光弘の叫び声と同時に、先生の意図が分からなくて驚いた。


「でもほら、林先生はその道のプロだから…。
私が少しずつでも自分のコトを話していかないと、先生も治療の仕様がないでしょ?」


と朋香は、光弘をなだめようと、そう言った。