幸せな時間が、確かにそこにあった。


デザートを食べ終わり、食後の紅茶も飲んだところで、雄一はルームキーを取り出して机の上に置いた。

これも、いつもの事。


瑠璃子はナプキンを綺麗に畳んで、席を立った。



雄一に肩を抱かれながらエレベーターに乗る。

雄一の暖かさが伝わってくる。



エレベーターはぐんぐん上がっていって、ついには最上階に着いた。


(まさか…)


瑠璃子は思ったが、そのまさかだった。


雄一がドアを開けて、

「どうぞ、お入りください、お姫様…」

と言った。



今まで、ドラマでしか見た事のない、スイートルーム。

窓ガラスが一面に広がっていて、そこから見下ろすこの街は、ありきたりな表現だが、宝石箱の中身を引っくり返して散りばめたようだった。



「雄一さん、こんな高そうなところ…」


瑠璃子は困ったように言ったが、雄一は、

「良いんだ、今日は…特別な日だから…」

と答えた。



(そうだ、今日は特別な日…大事な大事な…
もう言葉で言わなくても、お互い分かっている…)



瑠璃子は素直に喜ぶ事にした。


「すごい綺麗…素敵…。
雄一さん、ありがとう…」


と窓から見える絶景のパノラマに釘付けになったかのように、瑠璃子は窓にへばり付いていた。