【完】祝・高校教師〜彼氏を追い掛けました㊤〜

思い出に、出来たんだろう。



「…私さ、志乃になりたいよ」



「またぁ?あんた、知り合ったばかりの時も言ったね」



あの頃とは違う。

自由がいっぱいあって。

強い志乃に憧れてた時とは違う。



「私はまた…思い出には出来ない。傷が消えない限り」



項の傷に一瞬、痛みを感じた。

撫でると、思い出す隆斗の温もりは、昔のモノ。

震えながら、抱き締めてくれた、あの温もり。



「私は単細胞だから、姫菜みたいに覚えてられないだけ。忘れてはいけない筈なのに…今しか見たくないだけ」



私たちは違う場所を見ながら、自分を悔やんだ。