「数学の授業を始めます…」



姫菜が捕まって1週間。

俺はやりたくもない授業を行う。

菊田さんと理事長の働き掛けて、表沙汰にならなかった事件。

3F以外の生徒には、長期病気休養とされた。

家にも学校にも居ない姫菜。

警察署に行っても、まだ弁護士しか会えない。

俺は黒板に書いてた数式を消した。

3Fの生徒の気持ちが、俺には痛く突き刺さる。



「たかちゃん…?」



舜に呼ばれても、“先生を付けろ!”とも返せない。

涙が出そうになって、俺は目を閉じる。



「……はぁ…っ……」



それでも涙は、溢れた。