私はチョークの粉が付いた手を叩(はた)き、教室を出た。
向かう場所は一つ。
【KING】のたまり場。
その前に、私は警察署へと寄り道し、菊田さんに理由も告げずに、結婚指輪を預けた。
「もし、菊田さんが隆斗と会う日が来たら、渡して下さい」
そう、頼んだ。
菊田さんは私の腕を掴んだけど、私の目を見たら離した。
「頑張りなさい」
そう、言って。
私もう、全てを感じてるであろう菊田さんに頷き、笑って警察署を出た。
―――ごめんね、みんな。
私は、戻れない。
コンタクトを外し、髪を束ねた。
私は【紅姫】なんだ―――……。