「加奈じゃん、どーした?」
「優奈が彼氏さんのとこから逃げてきてて、とりあえずあたしの家にきてるんだけど」
「ああ」
「優奈ボロボロで……怪我とかしてて、あたしどうしたらいいか」
普段はしっかりしている加奈の声が、震えている。
逃げてきているってことは、優奈も少しは冷静になっているかもしれない。
「とりあえず今から行くわ」
そう言って、俺は28階から1階に向かうエレベーターに乗った。
加奈の家は、歩いて15分ほどと俺の家から近い。
閑静な住宅街の中にある、普通の2階建ての家。
「ごめんね、突然」
パイル生地のラフなワンピース姿の加奈が、
家の前で俺を待っていた。

