「君達~。そろそろ式が始まるよ~。さ、入って入って。」
案内係なのだろうか、先輩であろう男の人が声を掛けてきた。


「あ、はーい。今行きます!楓、行くよ!」
「あ、うん。」




会場は暗く、どこか色めき立つような雰囲気だ。



「ねぇ、楓。さっきの男の人ちょっとカッコ良くなかった?」
席に座ったら薫が話しかけてきた。
「私、あんまり顔見なかったから分かんない。」
「ええぇ~。もったいなーい。」





「薫、式が始まるよ。」
「え、ホントだ。」


パァ、と会場が明るくなる。
そして、シン…と会場内が静まった頃、学校に1人はいそうなしゃがれた声の初老人が「これから私立四王寺学園高等部、入学式を始めます。」と言った。


先生方の長ったらしい話しが終わった頃には、楓は疲れ切っていた。
「(まったく…話が長いよ。もっと短く簡潔に話した方が皆も分かりやすいのに…。)」



「ぇーそれでは、四王寺学園生徒会長、相沢尋和君お願いします。」
『キャーーーー!!!』


「「な、なに…!?」」

2人でハモッたね、なんて呑気に話してる場合ではない。何だこれは。女子の耳鳴りがするような高い声、そして少しだが野太い男子の声も聞こえる。声のでかさに会場となっている迎賓館のような建物が揺れている気がした。



「煩い。黙れ。」

シン…

会長と呼ばれた男がそう言った瞬間会場は水を打ったように静まり返った。