午睡は香を纏いて

「不老不死になった奴を殺すには、一つだけ方法があった。それは命珠を壊すこと。珠が砕けたら、奴は死ぬ。
三年前、俺たちは命珠を破壊しようと、奴がいるヘルベナ大神殿に侵入した」

「おれたち?」

「俺と、カインと、サラ。あと、何人かオルガの仲間にも手伝ってもらった。ゼフもいたな。
本当はサラを連れて行きたくはなかったんだけど、珠を破壊するには巫女姫の力がいるってことでさ。
だからサラも一緒だった」


レジィの瞳に、懐かしそうな色が浮かんで、次に、切なそうに閉じられた。


「神殿の深く、三大神官しか入れない拝謁の間に、珠はあった。
赤黒い、濁った色をした気味の悪い珠だった。それを壊すには手順があって、それはまず巫女の血で浄化し、後に神剣にて貫くこと。
サラは自分の腕を切りつけ、滴る血を命珠に灌いだ。
その途端、命珠は意思があるかのように浮いて、サラの体に、溶けた」

「溶けた?」

「そう、溶け込んでしまった。そしたら、サラの様子が急変した。血の気を失って、息苦しそうに体を折って、倒れた。
俺はそのとき、拝謁の間に誰も侵入してこないように、サラから離れた扉の前にいた。サラがゆっくりと倒れていくのを、今でもはっきり覚えてる」


キュルル、と動物の鳴き声がした。小さな音なのに、びくりとなる。
見れば水鳥が二羽、仲よさげに白い体を添わせていた。


「命珠はサラを、喰った。
サラの体は末端から色を変え、そこは次に灰に姿を変えた。
カインがどんな術を使っても灰化は止まらなくて。
抱きかかえたら、綺麗な指が、白い腕が、ぼろぼろと崩れて、舞った。

悪夢を見てるようだった。

それなのに、サラはそんな状態になっても、命珠の破壊を望んだ。
自分と命珠が同化したと理解した途端、『命珠ごと殺して』って言ったよ。
『命珠に喰われる前に、早く殺して』って、何度も。
声が掠れて、別人のようになってた。それでも、全てが灰に変わる、その時まで何度も繰り返して……。
でも、俺も、カインも、その場にいたもの皆、サラに剣を突きたてるなんてできなかった。
躊躇っている間に、サラの命は尽きた」