午睡は香を纏いて

思えば、あたしはこの世界の極々偏ったところしか見ていなかった。
何しろ、家畜小屋と平原、山の中の隠れ集落しか知らないのだ。

異国、いや異世界においての『街』は初めてで、ブランカに足を踏み入れたあたしは口をあんぐりと開けっ放しだった。

超大作ハリウッド映画のセットに迷い込んだ、なんてもんじゃない。
迫力が違う。溢れかえる生活臭が違う。


「間抜けな顔しないで、行くよ。ユーマ」


ぽんぽんと背中を叩いたのはセルファだった。


「あ、ごめんなさい。あの……すごいね」

「ん? まだ驚くには早いよ。
これから中央市場に向かうけど、そこはここ以上に賑やかだ」


セルファが辺りを見渡して、あたしもそれに倣った。

今立っているのは、ブランカへ入る三つの大門のうちの一つ、中央門を入ってすぐの場所だ。