羽織の男はしげしげと椿を眺める。

「お前さんが『長州派の沖田 総司』かい…なかなかどうして、沖田より男前じゃねぇか」

「愚弄するのですか?私は女です」

表情こそ変わらない。

しかし椿の愛染虎壱が微かに鍔鳴りする。

「気を悪くしたか?そいつは悪ぃ事をした」

男は尚も不敵に笑む。

「新撰組八番隊組長、藤堂 平助だ。この名前と面をよぉく覚えておけ」

刀も抜かず、平助はあまりにも潔く椿に背を向けた。

不満そうな見廻組の面々に、文句の一つも言わせない。

彼の威圧感がそうさせるのだ。

「お前さんの首をとる男だ…今夜は挨拶代わりって事で退いてやる」

「……」

去っていく段だら模様の羽織を見送りながら、椿もまた直感していた。

この男とは、いつか血みどろの戦いをする事になると…。