場所は変わって、放課後の図書室。


「九十九千晴、ねぇ」

 大きな机に向かい合って座る生徒が二人。

 女子の方は、ガチガチに緊張して俯いている。
男子の方は、腕を組み手にある個人表と女子とを品定めするように眺めていた。



 そのまま、三分ほど過ぎた後、


「覚えてないや」

 ぽいっ、と役立たずの紙切れは机の上に放り投げられた。



「そ、そんなぁ…徒野くんのブラックリストは、どこいったのさ」

「何それ、頭大丈夫?」


 千晴にとって徒野の印象は強いものの、徒野にとって千晴は印象どころか記憶ごと抹消されたらしい。



 (でも、当たり前だよね。よく考えれば、わたしって大したことない奴だもの)


 感覚が少しズレてしまったのは全てはおかしな九十九千晴不良説のせいだ。