千晴は、徒野夕吉のことが忘れられなかった。
さすれば、今までは自分の事ばかりに思えた噂話に、同じくらいよく登場するのが徒野夕吉であることを知った。
“二年C組の徒野って、顔良しスタイル良し学年トップのモテ男だよねぇ”
“けどさぁ、今までに彼女どころか友人と共にいる姿すら見たことがないんだけど…”
“うん、一年の時なんて授業中も何かしらの本を読んでいる。…体育の時間も書物は手放さないらしいし…なんか一年の時点で図書委員長だったもんね。何故か他に図書委員見たことないけども”
“むしろ、図書室限定の座敷童子なんじゃ”
と、まあこのような感じである。
昼休憩、トイレ休憩…こっそりひっそり噂話に聞き耳を立てた千晴の感想は、不思議な人だなぁというものだった。
とにかく、日に日に千晴の脳内に噂の図書委員長が入り込み、想いが募ってとうとう千晴は自ら図書委員に立候補したのであった。


