事もなげに頷いてみせた頼に、千晴は呆れる。


「頼は、私の噂を流した時も、今の近衛さんみたいに私のこと面白がってたの?」

「ちはるに比べたら近衛隆太なんて面白くもなんともないよ」

(え、わたし褒められてんの?けなされてんの?)

「僕の手で、ちはる自身の臆病さで、益々ちはるは独りになってく。そういうの、好きなんだ」

「わー、なんて嫌な奴」

「そういうちはるは、まだ徒野夕吉に飽きないの?」


 ふと頼の口から突発的に出てきた名前に、千晴は少しだけ、むっとした。


「どうして徒野くんが出てくるのさ、関係ないじゃん」

「関係なくないよ。今回の件だって、彼は生徒会長から直々に番長退治を頼まれてたみたいだし」

「今回の件?番長退治?」


 千晴には、さっぱりわからなかった。

 わかったことといえば、
頼が不良を倒して図書委員長を名乗った犯人だということだ。


(……ん?)

 そこで、千晴は頭の中で何かに引っかかる。


(図書委員長を名乗った…?…もしかして、)