気まずい沈黙が数秒流れた頃。

「…そうなの?」

 怖ず怖ずといった感じを装って尋ねる近衛に、あまり反省の色はない。


「それなら、ごめんなっ。てっきり君がウチの不良たちを倒したのかと…」

 爽やかに笑いながら困ったようなように両手を合わせる近衛には、やはり反省の色は見えないようだ。



「アンタんとこの不良なんて知らない。どうして無駄に人間と関わらなくちゃいけないんだ」

「徒野くんも、じゅうぶん人間だと思うのだけれど」

「はいはい」

「流された!」

 自分の中では珍しいツッコミを軽く流されて肩をがっくり落としたものの、千晴は内心ほっとしていた。


 ここ最近、毎日図書室に通い夕吉という人間を知る度に、どれだけ彼が人を避けているのが伝わってきていたのだ。

 やはり、夕吉は千晴が期待した思った通りの人間らしい。



(でも、徒野くんは何故ここに?他の不良の人達は何処に?)