「それで、」

 千晴が言おうとしたことを夕吉が先に言った。

「どうして君が、こんな所に?」


(どうしてって…不可抗力というやつだよ)

 そう千晴が言おうとしたら、今度は近衛が先に口を開く。



「君が、図書委員長?」

 その声は、やけにゆっくりで千晴はハラハラしながら夕吉の背中を見つめる。


「はい、そうですが?」

「ふぅん、君みたいな子がウチの不良達を?凄いなぁ…」

 首を傾げつつ苦笑する近衛の纏うオーラは、先ほど千晴と大学芋を食べていた彼とは別人のようだ。

 とてつもなく近寄り難い。


 夕吉も怪訝そうに首を傾げてから思いついたように笑みを浮かべる。

 その笑みは、近衛とは近いようで違うものだった。


「人は見かけによらないって本当ですね、近衛先輩のような人が猿山のボスなんですから」

「へぇ、言うね」


 言葉を交わした後、数秒間、夕吉と近衛は視線を交錯させる。


 千晴は、おたおたとしながらも黙ったまま夕吉の後ろに佇むしかなかった。