ようやく目的地に着き近衛に降ろされた千晴は、辺りを見渡す。
旧校舎は、ひっそりとしていた。
電気の通っていない校舎内は薄暗く、気味が悪い。
「あそこだ」
そう言う近衛が指差した方向を、千晴は目で追う。
すると、階段途中に設けられた踊り場に一人の男子生徒の姿が見えた。
「徒野くんっ!」
そう叫んだ時、
振り向いた夕吉の顔が僅かに困惑していたことを千晴は見逃さなかった。
「徒野くんっ、大丈夫!?」
近衛を置いて千晴は夕吉の元へと駆け寄り、手を伸ばす。
しかし、
すぐに、ぺしん、と夕吉の手によって払われた。
「な、なんで」
「触ると馬鹿がうつる」
「殺生な!」