一方、



 夕吉も、千晴と同様やっかいな人物に捕まっていた。




「いやあ、久しぶり」


 目の前の男は、にやにやとニヒルに笑っている。

 いつでもそう。
 何かを愉しむように。




 千晴が旧校舎に連行されている間。

 図書室で本を読んでいた夕吉も、二人組の眼鏡男子によって今いる生徒会室に連行されたのだった。


 正確には、目の前でにやにや笑っている男によって。






「久しぶりっていうほどの関係じゃないんですけど」

「相変わらず冷てぇな。あんなに放課後の図書室で人目を忍んで密会してたっていうのによ」

「人目を忍んだのは、図書室で生徒会業務をサボってた、あなただけでしょ」

「ちっ」


 舌打ちと共に豪快にソファーに沈み込み、長い片足をどかっと机に乗せる。

 ばさばさっと音を立てながら無惨な資料が床に落ちても、男は面倒な顔をするだけだった。




「しゃらくさい事言ってないで用件は何ですか」

「あー…俺、お前のそういう所がだーいすき」

「魔界へ帰れ」


 夕吉は、目の前の男に気に入られていた。

 夕吉が一年の時点で図書委員長になれたのも、男のお陰であったりもする。



「夕吉くーん、俺に借りあるよな?」

「は、」

「この間、人間嫌いの誰かさんがこっそり生徒会室に忍び込んで、とある女子の個人情報の紙を抜いていった話だよ」

「それがどうした(何故知っている)」

「ばーか。お前が忍び込んだ時に、俺は来客用ソファーで昼寝してたんだよ。全てお見通しだぜ」

「わー、すみません存在感無くて気づきませんでした」

「わあ、むっかー」