「九十九(つくも)ー、何処にいやがる!?」


「出てこいやコラー!!」


「九十九ッ!!」


「九十九ー!!」




 ドタ、ドタ、ドタ…。
 廊下を走る、たくさんの上靴の音。男子達のドスのきいた怒鳴り声。




 (ひいぃっ)

 肩を震わし、両手で耳を塞ぐ。


 噂の的、九十九 千晴(つくも ちはる)は、図書室の机の下で、体を小さくして怯えていた。




 (嗚呼、もうどうしてこんなことになっちゃったんだろう)


 高校に入ってからというもの毎日毎日、校内中…いや町内中の不良に追いかけられては逃げるを繰り返す高校生活も、ようやく二年目を迎えようとしていた。