夕吉の祖父は、陽の光が似合う温かい人。


 そんな夕吉の祖父は、いつも独りでいる夕吉に言うのだった。



『一緒なんだよ。本も、人も。たくさんの知識や影響、刺激、優しい心…なんだって与えてくれる。恐がることなんてない、先が読めないところがいいんじゃないか』





 夕吉には祖父の言うことがよくわからなかった。

 そんなにいいものだろうか。

 人というのは。



 祖父の言葉は、まるで都合のよいことばかりを並べたみたいだ。



例えば…、



「徒野くん」

 夕吉の名を呼んで、とろけたバターみたいに笑う千晴を、物憂げに見遣る。

 (確かに、これは便利だ。おつむが残念だけど)


「麦茶、おいしいねぇ」

「うん、おかわり」

「はいざんねーん。今、私がおかわりしたので最後でしたっ…あ、わ、私の飲む?」

「いらん」

「イランがどうした」

「この絡みいらっとする」


 何ともなさ気に小説へ視線を戻した夕吉は、ふと尋ねた。


「どうして図書委員になったの?」



 一瞬きょとんとした千晴は、すぐに、へたりと笑った。


「徒野くんがすきだからだよ」