「徒野くん、徒野くん」
「はい?」
「粗茶ですが…………………ちなみにふつつか者ですが、」
「この絡みいらっとくる」
「まあまあ、麦茶どうぞ」
放課後の図書室。
返却された本を棚に戻す作業が一段落ついた千晴と夕吉は、休憩をとることに。
それでも夕吉は本を手放さない。
「今日は、パックジュースじゃないんだよー」
「へー」
「ちょっと家庭科室から拝借してきましたー」
「へー」
「ちなみに同じコップにしたよペアルック」
「それしかないだろ」
夕吉は、千晴から氷の入ったガラスコップを受けとった。
ひんやりしたガラスの表面には、水滴がいくつもついている。
からんころん、と氷が二つ。
美味しい麦茶。
夕吉は、何とは無しに親代わりの祖父を思い出した。
『お帰り、夕吉』
縁側で麦茶を飲んでいた祖父はふり返って、にっこり笑った。
おいでおいでと手招きされて夕吉が隣に座れば、祖父はちゃんと用意していたらしい夕吉用のガラスのコップに からん、と氷をふたつ入れて麦茶を注いだ。待っていたんだよ、と。