お風呂はほんのり湯気で白く染まっており、その温かさが感じられる。

手前にある小さな脱衣所で服を脱ぎ、お風呂に入った。
湯舟に張られたお湯は温かく、思わずため息が漏れる。

しかし湯気が凄い。
それ程広くないお風呂はすぐに目の前を曇らせた。

ボクはとりあえず窓を開けた。
勢いよく全開に。

少しは恥じらいを持てと凜音にこの前説教されたばかりだが、やはりそんな感情は抱かない。
男の子のような容姿だと性格にも影響が出るのだろうかと考え、すぐに関係ないなと思い直した。

体を洗うため湯舟から出た。
ボクが出たことによってお湯が波打つ。
お湯に月が映り、揺らめいている。

髪と体を洗い、再び湯舟につかろうと、そちらを見た。

ボクが作り出したお湯の波紋はすでに止まり、綺麗にくっきりと月が映っていた。


「どこか違う世界に行けないかな。」


お湯に映った月に思わず問いかけた。
答えはもちろん期待しない。

実はこの月から某漫画の青い雪だるまのようなロボットが出てくるかもしれないと密かに期待した。
嘘だけど。

くだらない考えは捨てて、とっととお湯に入ろうと思ったとき、違和感。

お湯の月がまるで先程の問いに答えるかのように波打った。
風は吹いてない。
ボクは当然触れていない。

気のせい?

しかし、波紋は消えるどころかどんどん大きくなってきている。

地震?

まさか。
さすがにそれに気づかない程ではない。

そんな風に思考を巡らせていた。

そして、波紋が突然止まったかと思うと、


「ニャー!!!!!」


猫が飛び出てきた。