氷の姫君

私は牢に向かった。
牢の中には人間が座っていた。

「お前が人間か?」

その人間は強い瞳でこちらを見上げて急に驚いた顔をしていた。

「ああ。」

「どうした。私の顔になにかついている?」

「いや。雪女って美しいんだなと思っただけだ。」

「美しい?」

この男なにを言っているんだろう?

「ああ。」

そういうと優しく微笑んだ。
その表情におもわずどきりとした。

「お前、名は?」

「斎(いつき)だ。」

「斎,ね。」

私は斎を牢から出した。

「斎は雪女の秘密を知ってしまったからには人間の世界には返せないわ。」

「だったら俺ここで生きてもいいか?」

斎は嬉々ときいてくる。

「ええ。構わないわ。」

私は内心驚きながらも平静を装っていた。

「お前の笑った顔がみてみたい。」

「変な男。」

「ああ。よく言われる。」

そういうとまた嬉しそうに笑う。

本当に、変な男。

私はそんなことを考えながら斎を城の中へ招いた。