「〝いつになったら、来んの〟って」

「「は?」」


眉をひそめていっそうアホ顔になった安重と、気味悪そうに顔をゆがめたマコ。
マコは安重とハモったのがいやだったのか、無言で安重の頭を叩いた。


「ソファで寝てたの。そしたら誰か頬をつっついてきて…」

「セクハラね」

「変態だな」

「ちょっと黙って」


私が言うと、二人は案外簡単に黙る。
よっぽど気になるのかな。


「で、そう言ったの」

「いつになったら来るの、って?」

「うん」

「それ絶対知り合ってる人でしょ」


マコが頬杖をつきながら、長い髪を肩にかけた。
安重に関しては、「へぇー」なんて興味なさ気なアホ声を吐くだけ。


「おお、確かに。でもいつになったら私はどこに行くんだろう」

「嫁」

「あの世」

「まさかの幽霊!?」


確かにノイズ一つない声だったけど………え、うそやだ人間じゃないの!?
でもあの感触は紛れもなく人間で、付け足して言うと男の人だった。


「男の人だったんだけど…私、男の知り合いって中学の時から一緒な安重とかぐらいだしな…」

「生き別れた兄」

「あんた昼ドラの見すぎ」

「ああ! やっぱり王子様…!?」

「思考が乙女すぎ」

「…じゃあやっぱり昔引越しちゃって婚約の約束した幼馴染とか?」

「………」

「………」

「ええっ一番アリなの!? 二人とも小説の読みすぎじゃない!?」

「バッ…!! 俺は読んでねぇよ!」