「泣きませんから」




「あれ、本当?俺結構予想当たるんだけどな」




諒司先輩は、本当に。




「泣き、ませんって…ば」




ど、が付くほど


優しい。





「ずっと好きなんです。十夜が…、ずっと」




目から大粒の涙。


止めどなく溢れて。


あたしの制服を濡らしていく。




「里菜ちゃんと付き合ってても。諦められなくて…。好きなのに、どうしようもなくて…」




「うん。好きなんだよな」




諒司先輩はあたしの言葉に、


うんうん頷いて。


黙って最後まで聞いてくれた。


あたしが頼んだカフェオレは、


中の氷が溶けちゃって、


何も味がしなくなった。





「帰ろう、朱里」




黙って頷く。


涙が止まった頃を見計らって、


諒司先輩は声をかけてくれる。


伝票を持ってレジへ。


何も言わずにあたしの分まで


払ってくれた。





「お金、払います」




「今日は俺に付き合ってもらったから、いいの」




財布を鞄にしまって、


歩き出す諒司先輩。


送るとも何も言わないけど、


この道はあたしの家への道。





「ごめんなさい、泣いちゃって」




「いやいや、なかなかキュートだった」




「キュートって。おじさんみたいですよ」




「うーるーさい。これでもまだピチピチの高校3年生だっつーの」





諒司先輩は笑っていて。


何か本当に、安らぐって言うか。


何だろう、安心する。


諒司先輩って、安心する。





「じゃあまた学校で。早く寝ろよ?」




「先輩こそ。早く寝て下さいね?」




分かったよ。と、少し笑って。


諒司先輩は手を振って帰って行った。


あ~楽しかった。


あたしは空を見上げてそう呟いて、


玄関を開け大きな声で


ただいま、と叫んだ。


清々しい気分なことに、


我ながら少し驚いたりもした。