「な、仲良くなんかない!勝手に話してくるだけ!本当それだけっ!」
何でそんなことを聞いて来たのかは
分からないけど。
変な誤解されたくなくて。
あたしは力いっぱいそう言う。
すると、十夜は。
よかった、と。
そう言った。
「え?」
あえて聞こえないフリ。
十夜は、何でもない、と
慌てている。
よかった、って。
どういうこと?
ねえ、十夜。
十夜…。
「十夜!」
そこに現れた。
十夜の彼女の里菜ちゃん。
「何してるの?」
「別に何もしてねえよ」
そう言って十夜は、
あたしの頬からペットボトルを離し。
立ち上がると、うーんと背伸びして。
「優勝、おめでとう」
そう言って、里菜ちゃんから
死角になる背中越しに。
去り際にあたしの髪を、
くしゃくしゃとして。
十夜はあたしの前から、
姿を消した。
あ~、もう分かんない。
何で里菜ちゃん来ちゃうの。
何で十夜に声かけるの。
何で十夜を連れてっちゃうの。
そんなことを考えて。
あぁ、そうか。
里菜ちゃんは彼女だった。
そう思い直して。
また、自己嫌悪で、
つぶれてしまいそうになった。



