「じゃあね、十夜」
『おやすみ』
電話を切りたくなくて。
色々言葉見つけて、
わざと声に出して。
十夜を引き止めるなんてしたら、
もっと声が聞きたくなるのに。
「やばいって、もう…、」
声にならない声を出して、
ベッドに飛び込む。
夜に十夜の声が聞こえるなんて、
嘘みたいで。
電話を見つめて、
1人でにやける。
「雑誌読もっと!」
ハイテンションなあたしは、
今日買った雑誌を鞄から取り出し
寝ころびながら広げる。
あ~、十夜に会いたいなっ!
そんなことを考えながら、
ページをめくる。
その時、ふと思い出した。
夕方のコンビニでの出来事。
雑誌を見て、思い出す。
この雑誌を買うために、
あそこのコンビニに寄ったせいで、
あんなことになったんだ。
そう思ったら、また腹が立ってきて、
読んでいた雑誌を枕の下に入れ、
机に向かって座り直す。
「十夜も頑張ってるから、頑張ろ」
あたしは自分にそう言い聞かせると、
シャーペンを手に、ひたすら
見直しを始めた。



