「やだ、血が…」
そう言われ、恐る恐る
自分の足元を見れば
大量の砂と血が混ざって
流れ出ていた。
「あ、大丈夫…このくらい、」
そう言って立ち上がろうと
してみたものの、
思った以上に足首の方も痛くて
立つことが出来ない。
「あ、本当大丈…」
「何が大丈夫だっての、ばか」
聞き覚えのある声が耳に響いて。
あたしは動けなかった体が、
更に動かせなくなった。
「すいません。こいつ、保健室運ぶんで…続けて下さい」
どうして目の前にこの男がいるのか。
自分の目を疑いたくなった。
十夜が、ここにいる。
夢のような出来事だ。
「暴れんなよ。落とすぞ」
そう言って十夜は、
あたしの肩と膝の裏に手を回し、
お姫様抱っこの形で
あたしをその場から
運び出してくれた。
「十夜…っ」
どうして?
何でここにいるの?
そう聞きたくて名を呼んだのに。
「どうした?痛いか?我慢しろ、もうすぐだ」
聞きたいことじゃないことを、
あたしに教えてくれた。
だけど優しさであることに
涙腺が緩んでいく。
ここにいるのが本当に
十夜であることを確認したくて。
傍にいる十夜に、必死で
しがみついた。



