グラウンドに向かう途中。
「お」
会いたくない人に会ってしまった。
と言っても、会いたかった人。
「十夜…、おはよ」
「おっす。お前今日何出んの?」
「…、き、騎馬戦…だけど」
出来れば言いたくなかった。
こんな野蛮な名前。
絶対引かれ…
「ぷ…はは。騎馬戦、て」
腹を抱えて笑われた。
引かれたというよりも、
大爆笑の方。
「何…で、笑うの!」
「似合ってる。すっごい、騎馬戦て感じ」
嫌味が含まれた褒め言葉に、
あたしは返す言葉がない。
もう諦めて立ち去ろうとした時。
「十夜ぁ!遅くなってごめん!」
遠くから聞こえる、
耳に入れたくない甘い声。
パタパタと軽い足音が聞こえて、
視界に十夜とセットのように
引っ付く彼女。
「高原さん、おはよ?」
な、何が…おはよ?よ。
さっきもクラスでいたくせに。
この上目遣いが、
何とも気に食わない。
「お、おはよう…じゃ、行くね」
里菜ちゃんしか見れなくて。
十夜を見れば、きっと鼻の奥が
ツーンて痛くなる。