「何でこんな所にいるのっ…」
「朱里に会いに来た」
「…へ、」
間抜けな声が出た。
あたしに会いに来たって。
何で?
「髪濡れてんの?」
「うん。お風呂上がりだから…」
「そそるじゃん」
意地悪い笑みが、
何だかいつもと感じが違う。
そう感じるのは、
会いに来たと言われたせいか。
来海に告白じゃない?と、
言われたせいか。
「何でさっき泣いてた?」
「…泣いてないよ」
「嘘付くなよ」
「嘘じゃ…ないって」
責めるような目であたしを
見つめると。
「誰のことで泣いたんだよ」
「えっ」
春斗は、あたしの前に立つと。
顔の横に手を出してきて。
包むように、前に出て来る。
「ちょっと、誰か通るよっ…」
「うるせぇ」
何、これ。
近いんですけど。
逃げようとしても、
逃してくれなくて。
「俺なら泣かせねぇよ」
「ちょっ…」
「俺の女になれよ」
目が離せなかった。
こんなに真剣な春斗を、
初めて見たから。
「春斗…」
「お前が欲しい」
「やばいって、見つかったら」
この状況をどうにかしたくて、
たくさんの言葉をかけるけど。
知るかよ、と言いながら離れない。
通路には、
女子たちがお風呂から
帰って来たのか、集まっていて。
「朱里、好きだ」
「春斗ってば…」
その時。
周りがざわつき始めて。
目の前にいた春斗は、
いきなり誰かに引っ張られ。
そして頬を殴られた。
「痛ってぇ…」
春斗は頬を押さえて、
バランスを崩す。
あたしの目の前に現れたのは。
「十夜っ…」
怖い顔をした、
十夜だった。



