雨のち晴






集合時間になり、


全員が集まったのを確認すると、


再びバスに乗り、


1日目の宿泊場所に向かった。


街中の綺麗なホテルで、


あたしは来海と同じ部屋。





「夕飯何時だっけ?」




「18時半じゃない?」




時計に目をやると、


思ったよりも時間がなく。


とりあえず荷物だけ置いて、


来海と大ホールに向かうことにした。


大ホールにはたくさんの机とイスが


並んでて、各席に名前の


プレートが置いてある。


それはやっぱり班ごとで。






「腹減った」





隣には、やっぱり春斗がいて。


さっきのことを意識しちゃって、


変に周りをきょろきょろする。


すると、見つけた姿に胸を打たれて。






「十夜…、」






それと同時に衝撃が走った。


だって十夜の周りに、


女の子がいて。


その中の1人が、


十夜に抱き付いていたから。





「何でっ…」





頭が真っ白になった。


あんな子、いたっけ。


あまり見かけない子たちが


十夜を囲んでいる。


誰?あの人たち。


モヤモヤして、


体が固まった。






「朱里?」





春斗に声をかけられ。


あたしはふと顔を上げた。


そして、その刹那。


目から涙がこぼれた。






「朱っ、」





「ちょっと、お手洗い行って来るね」





泣くつもりじゃなかった。


泣いてる所を、


見せるわけじゃなかった。


あたしは何でこんなに、


弱いんだろう。





「意味、分かんない…」





泣いてる所は、


春斗にしか見られてない。


だけど。


1番見られたくなかった。


きっと春斗は、


あたしを慰めてくれるから。






「朱里、そろそろ料理運ばれてくるって」





「あ、うん」





席に戻ると、


来海にそう言われ笑顔を見せる。





「朱里、お前」





「春斗、お腹空いたって言ってたよね。好きな物あげるよ」





さっきの泣いたことを紛らわすように。


早口で、笑顔で、そう言った。


春斗は困ったように笑って、


頷いてくれた。


運ばれてきた料理は、


どれも美味しそうで。


あたしは無我夢中で箸を進めた。


春斗はが必死に話題を作ってくれたから。


来海も松本くんも楽しそうに


料理を食べていた。


また、春斗に助けられた。


そんな思いで、いっぱいになった。