「どこ行きたい?」
「どこって、別に…」
「じゃあ俺の行きたい所ってことで」
春斗はそう言うと、
行くぞと楽しそうに言って
先を歩き始めた。
戻りたい。
けど戻れない。
なら、もう。
春斗といるしかない。
あたしは渋々春斗に
ついていくことにした。
「どこ行くの?」
「お、ここいいじゃん」
入るぞ、と。
強引に入って行く。
そこは街中のとある大きなお店で。
入ってみると、店員さんが
快く迎えてくれた。
「今日はどうされましたか?」
「服って借りれます?」
「はい、もちろんです。ご用意いたしますね」
春斗は勝手に話を進めていく。
何、ここ。
何のお店?
「すいません、あの」
「どうなさいましたか?」
「ここって何のお店ですか?」
「ここは貸衣装のお店です」
貸衣装…?
確かに、お店の中には
たくさんの衣装が並んでいて。
「沖縄の伝統の衣装を着て、街を散策することが出来ますよ」
「あ、そうなんですか…」
何、ってことは。
春斗はここで衣装を借りるつもり?
何で?
「朱里、こっち」
春斗に呼ばれて振り返ると。
マネキンに着せられた衣装が、
たくさん並べられていた。
「選んで」
「は、何言ってん…」
「いいから。早く選べって」
選べって言われても、
そんなすぐに選べないよ。
なんて思ってると、
店員さんにフォローされて。
似合うと思いますよ、と言われた色を
試着することに。
「可愛い」
鏡を見て、思わず出た一言。
着物のような生地が、
鮮やかに輝く。
これが沖縄ならではの、
衣装なんだ。
「彼氏さんにも見てもらいましょうね」
「え、彼氏って…」
戸惑っていると、
カーテンを開けられ。
勝手にお披露目された。



