雨のち晴






そんなこんなで、


あたしはその後ろに


1人で座った。


あたしだって1人、


寂しいじゃん。


なんて思いながらも、


前の2人が気になって


仕方なかった。


空港まで2時間弱はかかる、


移動時間。


朝早く起きたせいか、


睡魔が襲ってくる。


麗華たちの様子を観察して、


後でからかってやるんだ。


って思ってたのに、


いつの間にか目が閉じていく。


やばい、寝ちゃう。


気持ちのいい瞬間の時。


誰かが隣に座ってきた。


せっかく1人で座っていたのに、


と思いながらも目を開ける。


と、そこには。






「よお」






と、軽く言い放った十夜がいた。






「ととと、十夜っ。何でっ…」





「朱里の隣に来たくて」





「え…」





何、これ。


夢?幻?


こんなに十夜が素直だなんて。


と、目を擦ると。





「いや、冗談だから」





と、まじめな顔で返された。





「ですよね…」





勝手に盛り上がって、


勝手に落ち込むあたし。


すっごいめんどくさい女。






「寝かせて」





「え、あたしも眠いんですけど」





「いや、俺のが眠いから」





「待って待って。あたしも眠いの」





どっちが眠いかで、


5分くらい言い争った後。


十夜は溜息をついて、


前に身を乗り出した。







「石黒、着いたら起こして」





「はいはい」





そう言うと、十夜は


あたしの隣で眠り始めた。






「本当に寝るの?」





「寝る」





「本当に?」





「あーうるせぇ」





せっかく隣に来たのに、


十夜はろくに話さず、


寝ようとする。


そんな寂しいことって、


ないじゃん。


そう思っていると。






「お前も寝りゃいーだろうが」





そう言って。


あたしの後ろに手を回し。


肩を引き寄せ、頭を引き寄せ。


寄り添う形になってしまった。





「え、ちょ…」





「はい、おやすみ」





まるで恋人同士のような、


そんな行為を、


いとも簡単にやってしまう十夜に。


ノックアウトされたのは、


言うまでもなく。


初めはドキドキしていたあたしも、


睡魔には勝てず。


隣にいる十夜への安心感から、


そのまま眠ってしまった。